しましまの恋、甘いジレンマ。
ギャップでめまい


今更だけど、知冬さんと婚約してしまった。

いいのかな、こんな簡単に決めてしまって。
母親に明日の打ち合わせもかねて電話で報告したら
「良かったね」とあっさりと言われて終わってしまう。

皆さん、それでいいんですか?何かこう言うことは…?

それとも自分が大げさに考えすぎているのだろうか?
志真はだんだんわからなくなってきた。
だけど何処かで心が満たされている自分がいる。

お風呂もすんで知冬にひと声かけて二階へあがり、就寝。



「今日はお昼から病院へ行きます。帰りは何時かも分かりません」
「はい」

翌朝、朝食の準備を終えて配膳しながら知冬に話す。
彼も今日が大事な日であることは分かっている。

「おばさんは強い人だから大丈夫。
むしろ私やお母さんのほうが心配しすぎてヤバイかも」
「志真も十分強いから大丈夫ですよ」
「そ、それどういう意味?」
「そういう意味ですが?」

あんまり褒められた感じがしないのは気にしすぎ?
ちょっとふくれっ面をしつつパンをかじり、時計を見る。
手術が始まるのは10時から。終わるのは一応14時の予定だが
もしかしたら長引くかもしれないと母に言われた。
体が手術に耐えられない場合は中断もあるかもなんて脅されて。

「……」
「大丈夫。強い人なんでしょう?」
「……、はい」

弱気になってきた志真の手を握り、力強く言ってくれた。

「父親から昔一度だけ聞いたことがあります」
「おばさんのこと?」
「父も強い人だと言ってましたよ。とても華奢な体をして、でも中身は男顔負けとか」
「あはは。そうですね。私も同じ一族の血が流れてるんだし強くならないと」
「志真は志真でちょっと抜けているくらいがいいんじゃないですか?」
「間抜けって意味分かってますよね?怒りますよ?」
「おーコワイコワイ」

知冬は根は優しい人だけど、ナチュラルに人を馬鹿にしてくるので油断できない。
朝食を食べおえて、簡単に片付けも済ませたら学校へ向かう。
1日休んでしまってまた昼からもお休みするので今日はしっかりと働かないと。


「大丈夫か志真。珍しいな、お前が仕事休むとか。風邪だったか」
「そ、そうなんですよね。風邪ひいちゃって」
「俺なんかそうそう風邪なんかひかんがな。まあ、鍛え方が違うしな」
「それは何とかは風邪ひかないからじゃないですか?」
「お。言うなー!あっはっは」

志真が仕事を休むのは何年ぶりだろうか。何か言われるかなと恐る恐る職員室へ
入るとすぐ声をかけてくる西田先生。気遣ってくれているのは嬉しいのだが
今は特に目立ちたくないのに大声でしゃべらないで。

「あ…はは。……はぁ」

ほら他の先生に見られてる。苦笑されてる。

「……」
「あ」

一部、ものすごく不機嫌な顔で睨んでいる人まで居るし。

ええ、もちろんそれは私の婚約者さんですけども。

「テオ先生おはようございます!」
「おはようございまス。今日もげんきですね」

ああ、怒りのあまりテオ先生のキャラまでちょっと無愛想。
今日帰ったら絶対怒られる。
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