次期社長の甘い求婚
「困ります……こんなの」


するとすかさず涙を拭ってくれる彼に、感情はますます溢れていく。


「別にいいだろ? 俺が勝手にやっていることなんだから」


それが困る。だって――……。


「ズルイですよ、こんなの。……人が落ち込んでいる時に、現れるなんて。神さんはどこまで王道ヒーローなんですか?」


「……王道ヒーローって……プッ。なんだよ、それ」


一瞬面食らった後、噴き出した神さんは今もクスクスと笑っている。


「わっ、笑い事じゃありません! だってそうじゃないですか! かっこよくて御曹司で。おまけにこんな場面で登場しちゃうなんて、王道ヒーロー以外のなにものでもありませんから」


酔っているからだろうか、クラクラする頭で必死に言葉を並べていけるのは。

けれど捲し立てるように言ったせいか、酔いが回って身体がふらついてしまった。


「っぶね」


前のめりに倒れそうになった身体を、神さんが支えてくれた。


「すみませっ……」


すぐに離れようとするも、不快感に襲われてしまい、身体の力が入らない。
< 108 / 406 >

この作品をシェア

pagetop