次期社長の甘い求婚
こんなのだめ――頭では分かっているのに、今はなにも考えず素直に甘えたい。


だって辛いから。
ひとりでいたら、辛くて苦しい。


差し出された優しさに甘えたくなる。


でもいいのかな? 神さんに私、酷いこと言ってばかりなのに。

それなのに、彼に甘えちゃっていいの?


抱きしめられているくせに、躊躇ってしまう。


「素直に甘えとけ」


私の気持ちなんて見透かされてしまったようで、放たれた言葉に背中を押された気がした。


「……あっ、悪い。場所が問題だよな」

「――え、わっ!?」


身体が離されたと思った瞬間、肩と膝裏に手を当てると、神さんは軽々と私を抱き上げた。


瞬時に代わってしまった視界の様子に、今の状況がなかなか飲み込めない。


「よっと」


私を抱き抱えたまましゃがむと、器用に落ちていた私のバッグを手に取り歩き出した。
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