次期社長の甘い求婚
なにも言わなくなってしまった私に、電話越しから心配そうに呼びかける声が聞こえてきた。


「あっ、すみません! あの……えっと、その神さんは……?」


混乱する頭で神さんのことを尋ねると、「会計を済まされ、出社されました」と返ってきた。


すぐに時間を確認すると、まだ朝の六時過ぎ。

それなのに出社って早すぎない?


『では朝食とお着替えの方、七時にお持ちいたします』

「あっ、分かりました。よろしくお願いします」


とりあえず「分かりました」と言って電話を切ったものの……。


「朝食に着替えって……神さんが用意してくれたんだよね?」


しかもここの会計を済ませたって言っていた。


記憶がないうえに迷惑かけてしまったと思うと、ベッドの上でがっくり項垂れてしまう。


おまけに昨夜の醜態を思い出すと、ますます居たたまれない気持ちでいっぱいだ。


「なにやってるんだろう、私……」


いくら失恋して辛かったからって、神さんに甘えちゃうなんて。

アルコールが抜けた今、昨夜のことを思い出すと顔から火が出るほど恥ずかしい。
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