次期社長の甘い求婚
軽々とファイルを手にしていたのは、今もっとも我が営業所でホットな人物、例の〝恭様〟だったのだから。


まさかこの場に彼が現れ、助けてくれるとは夢にも思わず、無意味に凝視してしまう。

すると恭様……もとい、神さんは唇の端を吊るし上げた。


「見つめられるのは構わないけど、これを片づけてからの方が嬉しいかな。確か四階だっけ? 資料室があるのは」


ゆっくりと歩みを進めた神さんにハッと我に返り、後を追い掛けた。


「すみません、手伝わせてしまって」


御曹司様にこんな雑用を手伝わせるのは忍びないけど、正直助かった。

ここは素直に甘えて、四階まで運んでもらってしまおう。


足のコンパスの長い神さんにかかれば、あっという間にエレベーターホールに辿り着いてしまった。


すぐに呼び出しボタンを押し、待つこと数秒。

なぜか横から視線を感じて痛い。


恐る恐る横を見れば、目が合った途端、誰もが惚れ惚れしてしまうほど、神さんはニッコリ微笑んだ。
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