次期社長の甘い求婚
就業時間中の今は誰も廊下を歩いておらず、ピンヒールの音が異様に響く。

五階建ての関東営業所。
総務部のオフィスは三階。資料室は四階にある。

少しの距離だけど、思っていた以上に資料が詰まったファイルは重く、次第に腕が痛くなってきてしまった。


「あと少し……」


エレベーターホールまで行って乗ってしまえばこっちのもの。

エレベーターを降りてすぐ横に資料室がある。
だからあと少しの辛抱なのだけど、そのあと少しが辛い。


こんな日に限って天気が良いからと、ピンヒールを履いてきてしまったことを後悔してしまう。
おかげで足元もおぼつかなくなっていく。


だめだ、一度休憩しよう。


そう思い、ファイルの束を床に置こうとした時。


「どこまで持っていくの?」

「――え? あっ」


ひょいとファイルの束を奪われていくのを、目で追ってしまう。

真っ先に目に飛び込んできたのは、腕まくりをしているせいで露わになっている逞しい腕。

血管が浮き出ているのを見ながら、視線を上げていき辿り着いた先に目が点状態になってしまう。
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