次期社長の甘い求婚
もう何度も言っている言葉を伝えるも、亜紀は納得してくれない。


「美月の気持ちも分かるけど、相手はあの恭様なんだからね? いつまでも悠長に構えていて辛い思いするようになっちゃったら、私……嫌だから」


「亜紀……」



亜紀はいつも私のことを思って言ってくれているということを。


「ちなみに今日の恭様は一日外出だけど、もしかしたら一度会社に戻ってくるかもしれないから。……会えるようなら会って、さっさと自分の気持ち伝えなさいよ」


「うん、分かった。……ありがとうね」


しみじみとお礼を言うと、やはり亜紀は恥ずかしいのか一気に珈琲を飲み干し、慌ただしく席を立った。


「悪いけど私、午後の準備しなくちゃだから先に戻るから。ここは私が出しておく」

「え、でも……っ!」


あっという間に亜紀は伝票を手に取ると、鞄の中から財布を取り出し、私を制止する。


「いいから。その代わり!! 一刻も早く恭様に告白したって報告しなさいよね」


少しずつ歩みを進めながら言い、亜紀は嵐のように会計を済ませカフェを出ていった。
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