次期社長の甘い求婚
鈴木主任本人の口から聞いているというのに、話についていけない。


鈴木主任の彼女さんには、一度も会ったことはない。


けれど会ったことがある先輩達や、鈴木主任本人から話を聞いていただけでも、ふたりはお互いのことを想い合っているのが、伝わってきていた。


そうでなかったら、就職してからもずっと付き合い続けてこられなかっただろうし、結婚の話も出ないはず。


それなのに、仕事が変わって引っ越して、鈴木主任が実家の仕事を継ぐってだけで、別れられちゃうものなの?


どんなに想いつづけても、絶対に私の気持ちは報われない。そう思っていたのに……。


好きって気持ちだけじゃダメなのかな? 少なくとも鈴木主任は彼女さんのこと、まだ好きに決まっている。
でなかったら、あの鈴木主任が今みたいにやつれちゃって、ボロボロにならないよ。


けれど私にできることは何もないってことは、分かっている。
結局は本人同士の問題だし、なにより鈴木主任はもう決断してしまった。


実家の仕事を継ぐこと。そのために彼女とは結婚せずに、今月いっぱいで退職することを。


頭では納得していても、やるせない気持ちになってしまう。


好きな人だったからこそ、鈴木主任には幸せになってほしかった。……なってくれると、信じて疑わなかったのに――。
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