次期社長の甘い求婚
感極まって受け取った指輪の箱をギュッと握りしめてしまう。


「よかった、引かれなくて」


そう言うと神さんは私の身体を抱き寄せ、安心したように頭上で息を漏らした。


「そんな、引くわけないじゃないですか……」


涙を堪えながら言うと、神さんは「それでも不安だった」と言葉を被せてきた。


「付き合い始めたばかりでプロポーズなんて、普通は引くもんだろ? でも本当によかったよ」


抱きしめる腕に力が入った瞬間、胸がギュッと締め付けられてしまった。


「今すぐに結婚したいところだけど、やることはやらないとな。まずは美月の親御さんに挨拶に行って、俺の両親にも紹介して。……とりあえず青森での研修が一段落ついてからだな」


そう、だよね。
神さんはもう少しで青森に行っちゃうんだ。


「慣れるまで少し待っててくれる? 一生に一度のことだし、焦りたくない。ちゃんとしたいから」

「……はい」
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