次期社長の甘い求婚
神さんと鈴木主任が関東営業所からいなくなって、早一ヵ月。


鈴木主任がしっかりと引き継ぎをしてくれたおかげで、特に大きなトラブルもなく、今日も庶務課は通常運転。


それぞれに振り分けられた仕事を、みんなそつなくこなしている。


私も丁寧に最後まで鈴木主任が教えてくれたおかげで、今のところ問題は起きていない。


まだ引き継いで一ヵ月だし、これから分からないけど。



「小野寺さんもしっかり一人前ね」

「小川主任!」


声を掛けてきたのは、鈴木主任の後任として昇格した小川主任だった。


「鈴木主任も本望でしょ。お気に入りの子の成長を見届けて退職できたんだから。……でもまぁ、彼ひとりいなくなっただけなのに、まるで別の職場みたいよね」


「……そう、ですね」


しみじみ話す小川主任に、切なくなってしまった。


彼女の言う通りたったひとりいなくなっただけなのに、まるで別の職場のようになってしまった。
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