次期社長の甘い求婚
それだけ鈴木主任の存在感は大きかったんだと思う。

常にみんなの輪の中にいて、ミスばかりしていたけれど、どこか憎めない人で。


周囲の些細な変化にも気づいてくれた人――。


そんな人がいなくなってしまったんだもの。
職場の雰囲気が変わって当たり前だよね。



「それに来月には小野寺さんもいなくなっちゃうし。……勿体ないのになぁ、残念」

「……すみません」


ここまで育ててくれた先輩達への恩義を思うと、胸がチクリと痛む。


「けどまぁ、仕方ないわよね。結婚する相手が相手だし。私も早くいい相手見つめないと」


両腕を上げ気合いを入れたのか、小川主任はパソコンと向き合い始めた。


小川さんに習って私もパソコンと向き合い、キーを打っている途中、つい視線がいってしまいのは、左手薬指に輝くダイヤモンド。


神さんが青森へ行ってしまってから一度も会っていないものの、毎日メールや電話で連絡を取り合っていた。


私は結婚を機に退職することに決め、会社にも伝えてある。


お互いの家にはまだ挨拶に行っていないけれど、それぞれ話はしてある。


この前久し振りにお母さんに連絡を取ったら、酷く驚いていたけれど、喜んでくれて神さんに会えるのを楽しみにしていると言ってくれた。
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