次期社長の甘い求婚
大学を卒業後、【かみの食品株式会社】に入社。

菓子類の開発、製造を主にしており、他にシリアルや最近では加工食品へも進出している大手食品企業だ。

総従業員数約一万人。全国に製造工場や営業所が所在している。


私が勤めるのは、関東営業所。
総務部庶務課に配属され、日々仕事をこなしていた。


メイク道具をポーチにしまい、いまだに化粧室の入り口を塞ぐように〝恭様〟の話で盛り上がる先輩達に、軽く会釈をした。


社会人になっても、先輩後輩問題は常に纏わりついてくる。


「先輩、失礼します」

「あっ、ごめんね小野寺さん。どうぞ」


余程会話に華を咲かせていたのか、上機嫌で皆道をあけてくれた。

触らぬ神に祟りなし。

さっさとこの場を去ろうとした時、牽制するように圧し掛かる声が投げ掛けられた。


「小野寺さんは恭様には、興味がないんでしょ?」
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