次期社長の甘い求婚
ピタリと足が止まる。
顔を上げれば、威圧的な目が向けられていた。


これだから嫌になる。
女だからって皆が皆、同じタイプの男を好きになると思っているのだろうか。


「はい、何度も伝えてきましたが興味ありません。会話にいつも入ることが出来ずすみません」


にこやかに返せば、先輩達の威圧的な目も和らぐ。


「ううん、気にしないで。男の趣味なんて人それぞれだしね」

「いい人できたら、報告してね~」



そう思っているなら、わざわざ圧力かけてこないでほしい。

もちろん心の中で呟き、足早に化粧室を後にした。



先輩達が常に騒いでいる〝恭様〟は、我が【かみの食品株式会社】の創設者一族のひとり。

現在の社長のひとり息子で俗に言う御曹司様だ。


神 恭介(じん きょうすけ)二十七歳。

身長百八十センチの長身と、モデルのようなスタイルの良さ。

もちろん顔だってイケメンだ。

それこそテレビに出ている俳優よりも、目を引く容姿を兼ね揃えている。
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