次期社長の甘い求婚
「正直、神さんと結婚するってことを軽く重んじていた部分はあります。……話を聞いて不安にもなりました。それでもやっぱり好きって気持ちだけは、変わりませんから」


真っ直ぐ目を見つめ伝えると、お父さんは「まいった」と言わんばかりに頬を緩ませた。


「美月の気持ちは分かったよ。……実は反対する理由はもうひとつあるんだ」

「――え、もうひとつ……ですか?」


オウム返ししてしまうと、お父さんは頷いた。


「あぁ、ここからは神の息子と同じ立場として言わせてほしい」


そう前置きすると、お父さんはまた言い聞かせるように話し出した。


「神から聞いているが恭介君、今は研修中で全国飛び回っているんだよな?」

「はい、そうですけど……」



「父親が亡くなって突然後継ぎとして、会社を背負って立つことになったんだが、今でも思い出したくないほど辛いことがたくさんあったよ。……今となっては、美月のお母さんと別れる道を選んで正解だと思っている。それほど俺自身に余裕がなかったから」



当時のことを思い出しているのか、お父さんは表情を歪ませた。



「継がないつもりでいたから、一から勉強をし直して人脈作りに奔走して。必死に頑張ってもなかなか役員や社員達からの信頼を得られずで。……妻の父親の援助がなかったら、今の会社はなかったかもしれない。どんなに努力したって大変なことなんだ。会社のトップに立つということは」



きっとどんなに私が知る努力をしたところで、到底お父さんや神さんが感じている気持ちは、理解できないのかもしれない。

話を聞いて、そう思ってしまった。


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