次期社長の甘い求婚
次第に足音が近づいてくる中、恐る恐る顔を上げると、怖いくらいお父さんは笑顔で歩み寄ってきている。


不気味な笑顔に、顔が引きつる。


そして私達の前で立ち止まると、神さんに向かって重い口を開いた。


「恭介君、先ほどの一部始終は一体どういうことかな? 分かるように説明を求めさせてもらうよ」

「いや、その……」


いつもの神さんらしくなく、お父さんにたじろいてしまっている。

一方のお父さんはというと、じりじりと神さんに詰め寄り、圧力をかけているように見える。


ふたりの様子にどうしたらいいのか分からず、ただ様子を見守ることしかできない私。


「美月に自分の気持ちを伝えたいというから、セッティングしたけど、美月に手を出していいとは一言も言っていない」


「……すみません」
< 387 / 406 >

この作品をシェア

pagetop