次期社長の甘い求婚
『別に実らなくたって、恋愛スキルは上がるもんでしょ?』

「それはそうかもしれないけど……。でも私、恋愛するなら結婚までできるような人としたいんだよね」


理想の恋愛観を語ると、「はぁ?」とあからさまな声が返ってきた。


『何言ってるのよ、今は恋愛してなんぼじゃない。いい? 恋愛スキルを上げて男見る目を養わないと、いい男なんて捕まえられないわよ』


亜紀の言うことも一理ある。――でも。


「そうかもしれないけど、私はたったひとりの人と恋愛して幸せになりたいの。亜紀が私のことを心配して言ってくれているって分かるよ? でもやっぱり私は何人もの人と恋愛するより、たったひとりの人と幸せな恋愛したい」


『美月……』


「ごめんね。……でも亜紀の気持ちはいつも分かっているし、感謝しているから」


さすがの亜紀も押し黙ってしまい、電話越しからは『美月が幸せになれるなら、いいよ』と力ない声が返ってきた。
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