次期社長の甘い求婚
そんな亜紀に再度お礼を述べ、電話を切ったと同時に、自然と溜息が漏れてしまう。



「なんか今日は疲れちゃったな」


スマホを手にしたまま、ベッドに仰向けで横たわった。

瞼を閉じると神さんの顔が浮かんでしまう。


顔も見ずに言いたいことだけ言って帰ってきちゃったけど、注文してもらった料理には手も付けず、おまけに支払いもしてこなかった。


あの時はただこれ以上、神さんと一緒にいるわけにはいかないって思いでいっぱいだったけど、帰宅した今、冷静に考えると失礼にもほどがあるよね。


出された料理にも手をつけず、おまけに支払いもせずなのだから。


けれどこれできっと神さんは私のこと、どうでもよくなったよね。

あの時追い掛けてこなかったのが、なによりの証拠だ。


幻滅されちゃったかもしれない。

せっかく仕事面で誉めてもらえたのに、人として最低限の常識もない女だったんだって。


それが本望のはずなのに、なぜだろうか。
ほんのり胸が痛んでしまうのは――。


痛む胸に疑問を抱きながら、その日はそのまま眠りに就いてしまった。
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