次期社長の甘い求婚
〝いい加減、忘れるべきなんだ〟って。


大きな式場で執り行う予定らしく、幸せそうに頬を緩めながら言われてしまった。


『小野寺さんも、是非出席してね』と。


もちろん笑顔で『喜んで』と答えたけれど、心の中では全然笑えてなんていなかった。


よく好きな人には幸せになって欲しいと言うけれど、私はそう思えない。

頭では鈴木主任の気持ちは、婚約者である彼女一直線で、私には一ミリも入る余地がないことくらい分かっている。


それなのにいまだに諦めがつかないのは、鈴木主任のことが好きだからだ。


けれどさすがに結婚式に招待され、幸せそうなふたりを目の当たりにしたら、嫌でも現実を受け入れちゃうんだろうなって思う。


婚約者がいると知っていても、実際に彼女を見たことがないし、ふたりで幸せそうにしているところを見たことがないから、今もこうして未練がましく想いを絶ち切れないでいるのかもしれない。


結婚式に出席したら、きっと諦めがつく。

もうどんなに想っていても、報われることはないのだと――。
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