時の詩-暁の獣-
プロローグ

いつもの朝
少年は重いまぶたを開けた.
朝日に照らされながら小鳥たちが
朝を歌っている.
だが町の人々の声が聞こえない.
いつもなら朝市や子供たちの声なので
うるさいほど賑わっている
しかし今日のこの日は町全体が眠ったように静かだ.
不思議に思った少年は
両親のいる居間へと向かったがそこにいるはずの両親の姿はない.
母は朝市へ出かけたのかと不思議に思ったが父がいないのは明らかにおかしい.
これが普段通りなら父はここで 湯のみを啜っているはずだ.
そこで少年は両親の寝室の扉を開いた.
ふたりはまだそこで眠っていた.
揺すっても叩いても目を覚まさない.
ふと見覚えのない青の羊皮紙が父の机においてあるのを目にし近づいた.

[これは...どーゆーことだ??]

そこにはこう書かれていた

時の詩
[暁の獣は炎の石に誇りを歌う]
[朝焼けの陽炎は桜の石に優しさを零す]
[昼下がりの魔術師は氷の石に力を込める]
[夕焼けの魔女は果実の石に苦悩を催す]
[宵闇の姫は夜空の石に安らぎをもたらす]
[白夜の王は綿アメの石に正義を与える]
[真夜中の天使は汚れの石に裁きを講じる]
[丑三つの刃は虹の石に愛を蒔く]

この謎を解き明かせ
さすれば人々を目覚めさせることが出来るであろう.
選ばれしものよ そなたの選択に皆の命がかかっておる

何とも意味深な言葉が書かれている.
自分以外のすべての人間が眠っている.だがなぜ自分はこうして起きているのか少年には理解出来なかった.

しかし
行動しないことには始まらない
少年はその羊皮紙を手に、両親の寝室を出た.

少年が向かったのは先程まで寝ていた自室だ.そこで旅たちの支度を始めた.

ナイフにマント、毛布に数日分の着替え、食料、水分.それから幼い頃両親にもらった宝物を入れる小さなショルダーバッグ.
手早く身支度を済ませた少年は先ほどの羊皮紙を小さく折り畳みショルダーバッグの中に入れ、両親の元へ足先を向けた.

「父さん、母さん僕はこれからみんなを目覚めさせるために旅に出ます.
必ずみんなを助けて見せます.
だから僕が帰ってくるまでどうか待っていてください.
必ず生きて戻ります.行ってきます」

寂しさや辛さの押し寄せる
重たい足を必死で動かし少年は慣れ親しんだ我が家を後にし町をたび立つのだった.

彼の名はルーク...

同じ頃
隣町でも同様に人々は眠っていた.
そこに1人の少女がいた.
歳は15くらいだろうか...まだ幼さの残るあどけない顔に笑顔はなかった不安にかられながら怯えている
その手には赤い羊皮紙を握っていた.
そこにはこう書かれているようだ.

時の詩
[暁の獣は燃え盛る山に眠る]
[朝焼けの陽炎は花咲き乱れし森を漂い]
[昼下がりの魔術師は凍てつきの湖に沈み]
[夕焼けの魔女は甘き香りの野原に踊り]
[宵闇の姫は闇夜の洞窟に収まり]
[白夜の王は純白の玉座に鎮座し]
[真夜中の天使は天空の城に羽ばたき]
[丑三つの刃は幻想の宴に身を落とす]

この謎を解き明かせ
さすれば人々を目覚めさせることが出来るであろう.
選ばれしものよ そなたの選択に皆の命がかかっておる

少女はロープとマント、毛布に数日分の着替え、食料、水分.そして幼い頃両親にもらった宝物の短剣とコンパスを用意し
町を後にした.

少女の名をシャンティス...

異なるふたりの選ばれし者が
異なるふたつの手紙に導かれ
同じ冒険を始める
2人は互いの大切なものを取り戻すことが出来るのか...
今二人の冒険が始まる.
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