レーザービームの王子様
睨み合うふたりと内心あわあわしている私の間に、数秒間沈黙が流れた。

動いたのは総司。チッと舌打ちしたかと思えば、いきなり左腕を掴まれる。



「帰るぞ、すみれ」

「は……っちょ、総司?!」



いくら子どもの頃から一緒の幼なじみとはいえ、こういうときは男女の力の違いを思い知らされる。

私は総司に強く腕を引かれ、半ば強引にその場から歩き出すことに。

一瞬、久我さんがこちらに手を伸ばしかけて思いとどまったのを、私は視界の隅で捉えた。



「あ、あの久我さんっ、今日はありがとうございました……!」



足早に進む総司に引っぱられながら、なんとか振り向いてお礼を言う。

立ち尽くしたままだった彼は、私の言葉に反応して片手を挙げた。



「……すみれ! “また”な!」



久我さんに返事をしようとしたのに、また強く総司が手を引いたからそれは叶わない。

転ばないようとっさに前を向きながら、私は抗議した。



「ちょっと、総司! あんな態度、久我さんに失礼でしょ!」

「うるさい、馬鹿すみれ」



こちらに視線を寄こすことなく、総司が不機嫌につぶやく。

わ、私今なにもしてないのに『バカ』だと??! なんなの今日の総司、いつにも増して失礼極まりないんですけど!!??


憤慨して言葉を失った私を、ようやく総司は振り返る。



「おまえ、何やってんだよ。あれだけ俺が釘刺したのに、なんで久我 尚人と会ってんの」

「あのねぇ……っ私が誰と会ってようが、そんなの総司には関係な、」

「あるよ、俺には」
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