レーザービームの王子様
ようやく落ち着いてドリンクメニューを眺めていた私を、頬杖をついた広香がため息混じりに横目で見てくる。



「まー、久我さんの話はまた後でじっくり聞くとして。……すみれのその恋バナに関する耐性のなさは、総司くんが絡んでるよね。確実に」

「は、総司? なんで?」



前半のセリフがいただけないのはともかく。思わず、メニューから顔を上げて首をかしげた。

私と広香は、高校3年間同じクラス。

そして2、3年生のときは、総司ともクラスが一緒だった。

だから広香も、私が話をするまでもなく総司のことはよく知っているんだけど……。


彼女は綺麗なネイルで彩られた右手の人差し指をピッと立て、小さく振る。



「だぁって、少なくとも高校時代あんたに彼氏ができなかったのは、間違いなく総司くんのせいじゃん」

「ええ? どういうこと?」

「男どもはみんなね、幼なじみである総司くんの存在がネックですみれに近付けなかったの」



かわいらしく左右に揺らしていたその指で、広香はひょいっと枝豆をつまみ上げた。

わけがわからず、私は彼女が枝豆を頬張る様子を眺める。



「なにそれ。総司って、男子にそんなこわがられてたの? 裏番長的な?」

「なんでそうなる……逆よ逆。イイヤツで頭良くてイケメンでスポーツもできる超人が幼なじみなんて敵うわけないから、みんな勝負する前から諦めんの」

「………」



意味がわからん。たしかにあの頃も、まわりの人たちに総司と付き合ってるってよく誤解されてたけどさぁ。
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