レーザービームの王子様
「いやーでも、実際すみれの中で今1番恋人に近い関係なのってその久我さんでしょー?」

「し、知らない」

「『知らない』って、……あのねぇ。すみれ、友達感覚で久我さんといるわけでもないんでしょ? 一緒にいてドキドキしたりしないの?」

「………」

「わかりやす! なーんだ、してるんじゃん!」



さすが、付き合いが長いだけあって広香は私の機微に敏感だ。

にやにや笑いを隠そうともしない彼女にいたたまれなくなり、ついくちびるをとがらせた。


土曜日の夜。店内はいつにも増して活気があり、客たちの笑い声や食器が触れ合う音で騒がしい。

今日はいつものカウンター席じゃなくて、店の奥にある小さめのテーブル席だ。私はグラスの底に残っていたウーロンハイを飲み干し、コン!と音をたててテーブルに置いた。



「ひ、広香は自分が恋愛体質だからって、すぐそっちの方に持ってこうとするけどさぁ」

「何言ってんのすみれ。恋愛に体質なんて関係ないよ。気づいたらスコーンと落ちてるもんなの」

「あああもうだからそういう発言がプロなんだって……! かゆい!! じんましん出そう!!」

「プロってなによプロって」



呆れ顔の広香を前に、私はゴシゴシと自分の両腕をさする。

今まで、自分に縁遠いまま生きてきたからかな。ある程度の年齢になった頃から、女友達の恋バナなんかを聞いてもムズムズしてしまうというか、黙って聞いていられないのだ。

……もはやこれ、恋愛アレルギーといっても過言じゃないのでは。
< 115 / 212 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop