レーザービームの王子様
広香は、私の高校時代からの友人だ。

猫みたいなつり目に、カッコイイ黒髪ショートヘア。おまけに背が高くてモデル体型の広香。

対する私はたれ目がちなまるい瞳に色素の薄い猫っ毛ロングヘアで、身長は153cmと小柄な方。

一見正反対な私たちは、仲が良いことをまわりからよく不思議に思われたりしたけれど。クールな見た目とは裏腹に実は乙女思考で夢見がちな広香と、見かけは清楚系らしいのに中身がおっさんくさい私には、お互い外見と内面がちぐはぐという妙な共通点があった。

そんな感じでゆるく続いた友人関係は、今や8年目へと突入している。



《でもま、そういう事情なら仕方ないか。イケメンウェイターがいるスペインバルはまた次の機会ね》

「ん、ごめん。また誘って」



そうだ。思いっきり脱線してたけど、もともと広香は今夜私を食事に誘おうと電話をしてきたらしい。

こちらが謝罪を口にすれば、《いーよいーよ》と軽い調子で彼女は笑う。



《その代わり、今夜のことはまた後でじーっくり話聞かせてもらうからね?》

「……なんも起きないと思うけどね」



ていうか、起きなくていい。普通に野球観戦して普通に楽しんで普通に帰りたいです。

なんだか期待している様子の広香には悪いけど、どう考えても何も起きようがない状況なのだからこればっかりは仕方ない。

だって相手は有名人、プロ野球選手なのだ。私と同じ観客席から応援する側でなく、グラウンドでプレーする側。

……うん、ないない。きっともう、言葉を交わすこともない。
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