毒舌王子に誘惑されて
「ーーこういう仕事も基本は一人でやるのよね?」

はっきり言ってしまえば、私と葉月君は相性が悪いと思う。
いちいち癪に障ることばっかり言われるし。
まぁ、向こうも同じように思ってるだろうけど。

それでも、こうやって愚痴をこぼす相手がいるだけで随分と救われる。


一人だったら、もっと早くに音を上げていたと思う。


「手が足りなきゃ、一人ですね。
もっと足りない時はこういう張り込み仕事を専門にやってるフリーの記者を頼みます」

葉月君は好物らしいツナマヨおにぎりにかぶりつきながら、答える。
よく毎日飽きもせずに、同じものを食べ続けられるなぁ・・。


「だよね。 週刊誌の仕事って、大変なんだね。 同じ社内なのに、何も知らなかったな」

「程度の差はあれ、みんなそうじゃないですか。出版社なんてあらゆる分野があるんだし。 俺も少女漫画とかゲーム専門誌とかさっぱりですよ。

入ってみなきゃわかんないし、入ってから知ればいいんじゃないですかね」

入ってみなきゃわからない。
実に葉月君らしい回答だけど、確かにその通りだわ。


「美織さん的にはうちは不本意なんでしょうけど、俺は悪くない職場だと思ってますよ。
高田編集長はああ見えてやり手だし。
佐藤さんは気持ち悪いオタクに見えるかも知れないけど・・・まぁ、気持ち悪いオタクですけど、編集者としてはやっぱプロですよ」
< 13 / 100 >

この作品をシェア

pagetop