毒舌王子に誘惑されて
「明日発売のナオが表紙の号、きっと売れますよ」

葉月君は自信たっぷりに宣言する。
私に対する態度は酷いものだけど、佐藤さんのことは尊敬していることが言葉の端々から窺えた。

あの下乳写真か・・。 写真のチョイスはわからないけど、表紙が重要なのはファッション誌だって同じだ。

この子が表紙なだけで売上倍増。

そんなモデルを育てることに私達は必死だった。

新人モデルのアリサちゃんの評判、どうだったかなぁ。

私が提案してたリゾートワンピの企画は通ったんだろうか。


ついついサブリナのことを考えてしまっている自分に気がつき、ぶんぶんと首を振った。


私はもうリアルの編集部員なんだから。

個人的には全くもって興味ないけど、今大事なのは女子アナの不倫!!

「不倫よ、不倫・・・不倫に集中しなきゃ」

「美織さん、 ちょっと邪魔」

背中からドンと窓ガラスに身体を押し付けられ、私は鼻を強打した。

ただでさえ低い鼻が・・。

「ちょっと。いきなり何するのよっ」

「しっ。黙ってて」

振り返って文句を言おうと思ったけど、できなかった。

後ろから抱き締められるような形で、身体の自由を奪われたから。


背中に葉月君の体温を感じる。

自分の心臓の音と葉月君の息遣いだけが聞こえてきて、何が起きてるのかわからなくなった。
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