毒舌王子に誘惑されて
葉月君は珍しく真面目な顔でじっと私を見つめた。
澄んだ茶色の瞳に私の酷い顔が写っている。

葉月君がふっと微笑むと、その綺麗な瞳が柔らかいアーチを描く。
意外にも素直な優しい笑顔だったので、思わず見惚れてしまう。


「怒ったことは謝んないですよ。悪いと思ってませんし」

葉月君は一度言葉を区切って、私から視線を外すと手元の雑誌に向けた。


「・・・けど、そんな顔でもちゃんと出勤してくるとこは流石だなと思います。俺には真似できないんで」

私の方を見ないまま、早口気味にそう言った。



ーー褒められたのか馬鹿にされたのかわからないけど、少しだけ気持ちが軽くなった。くすぐったいような、温かいような不思議な気分。


口は悪いし、礼儀知らずだけど、イヤな奴じゃないんだよね・・・。



「美織ちゃん、おはよー。 昨日はおつかれさまでした」

編集長がニコニコ顔で私の肩をポンと叩く。

「編集長、おはようございます。 あの・・昨日は申し訳ありませんでした」

「ん? いーの、いーの。若い時は色々あるよね〜」

器が大きいのか、何も考えてないのか、この人も読めない人だ。
サブリナの編集長だったら、ブチ切れてただろうな・・。
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