毒舌王子に誘惑されて
「超エリートじゃないですか。
ーーなんで、別れちゃったんですか?」

俯き気味に歩いていた私は弾かれたように顔を上げ、驚きを隠せない顔で葉月君を見つめる。

葉月君は薄く笑った。
薄闇に浮かぶその笑顔はどこか切なげで、胸の奥がきゅっと締め付けられた。

「今のはカマかけてみただけなんだけど・・当たりでした?」

「どうして、そんなに鋭いのよっ」

私は観念して、裕司との馴れ初めと別れをポツリ、ポツリと語った。

意識してなのか、無意識なのかわからないけど、葉月君は私との間にいつもより距離を取って歩く。


私はそれを寂しく思ったけど、自分から距離を詰めるほどの勇気も覚悟もなかった。


「嫌いで別れたわけじゃないって事ですよね? 美織さんも、あの人も」

「まぁ、そうだけど・・。 長年付き合ったのにプロポーズに即答できない彼女なんてね」

私は自嘲気味に言った。
裕司は優しいからはっきり言わなかっただけで、きっとあの瞬間に幻滅されてると思う。


「美織さんが仕事を大事に思うからって、あの人への気持ちが浅かったってことにはならないでしょ。
どっかで、あの人より仕事を選んだって自分を責めてませんか?」

葉月君は射抜くような強い眼差しで私を
見据える。


ーーあぁ。本当に、どうしてこんなに鋭いんだろう。

私より私の気持ちが見えてるみたいだ。

裕司と別れて以来、私が恋愛を避けてた一番の理由。

大好きな彼との結婚より仕事を選んでしまった。

そんな自分は女として欠陥品なんじゃないかって、ずっとそんな風に考えてた。

あんなに大切にしてくれた裕司を、きっとものすごく傷つけた。
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