毒舌王子に誘惑されて
私と風子のいつものお店は、会社近くにある小さなカフェバー。 品数は多くないけど、とびきり美味しいごはんとお酒を出してくれる。
何より、この立地にも関わらず会社の人がほとんど来ないから気兼ねなくお喋りできるのが一番の魅力だった。


「ごめんっ、ちょっと遅れた〜」

9時を少し過ぎた頃、勢いよくお店の扉が開いて、風子が駆け込んできた。

150㎝ちょっとの小柄な体型、黒髪ボブヘア、小動物系の童顔な顔立ち。

可愛らしいデザインのクリーム色のワンピースがよく似合っている。

私と同じ歳には到底見えない。
昔から歳より上に見られながちな私は、内心ちょっと風子が羨ましい。

「いいよ、いいよ。もっと待つかと思ってたもん。 飲み物、何にする?」

私は向かいに腰を下ろした風子にドリンクメニューを渡す。
この可愛らしい外見とは裏腹に、風子はザルだ。普段から「ビールは水」と豪語している。

「とりあえず、辛口の白をグラスで。
つまみはねー、生ハム盛り合わせとチーズのニョッキとお肉も欲しいよね〜」

おまけに、痩せの大食い。


「じゃ、乾杯〜 今日もおつかれ」

私のビールと風子のワイン、つまみの生ハムが揃ったところで私達はグラスを合わせた。
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