毒舌王子に誘惑されて
ーー新しい誰かと一から関係を築いていくって大変だよ。

風子に言われるまでもなく、それは自分が一番よくわかっていた。

学生時代は両思いになるまでが恋、みたく思ってたけど、大人の恋はそんなに単純じゃない。
付き合い出してからがスタートだし、結婚がゴールではないことも薄々気がついてしまっている。

恋愛なんて、歳を重ねれば重ねるほどにハードルが高くなっていって、ちっとも甘いもんじゃない。


「とにかくさ、美織はもっと自分に正直にならなきゃ。 葉月君とも裕司君ともデートでもエッチでもしてみたらいいじゃん!?
そんで、自分が幸せになれそうな方に進めばいいのよ」

「ちょっと、風子」

酔った勢いでとんでもない発言をする風子の口を、私は慌てて塞ぐ。

「知ってる?美織。
女はねー、ワガママにならないと幸せ掴めないんだよ」

風子は人差し指を私の顔に向けると、経験豊富な熟女にでもなったかのように、したり顔でそんな事を言った。




なんとかギリギリ終電に駆け込んで、マンションに帰る途中、バッグの中の携帯が震えた。

【裕司】

ディスプレイに表示されたその名前に、私は少しドキリとする。

ーー風子がおかしな事言うからっ。

気持ちを落ち着かせてから、応答ボタンを押す。
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