毒舌王子に誘惑されて
有楽町駅前の大型書店を通り過ぎるとき、ショーウィンドウにはられていた芥川賞受賞作のポスターが目に止まった。


「・・そういえばさ、葉月君て文藝希望だったんだってね? 編集長から聞いちゃった」

「あの人はまた、余計なことを・・」

葉月君は苦虫を噛み潰したような顔をしたけど、私は気にせず話を続けた。

「リアルに配属になって、私と同じように落ち込んでたんでしょ!?
どうやって立ち直ったの??」

「・・美織さんて、悪気なく人を打ちのめすタイプですよね」

ちょうどその時、交差点から響いた車のクラクションが葉月君の言葉をかき消した。

「えっ!? 何て言ったの?」

葉月君は晴れ渡る青い空に向かって、深い溜息をつく。
そんな些細な仕草も、悔しいくらいに絵になっていた。

「落ち込みましたよ。芸能人追いかけるのなんて、全然興味無かったし。
転職しようかなんてマジで考えたり・・

けど、新入社員研修でしたっけ? あれで先輩社員の話ってのがあってーー」

「あぁ、それ私の時もあったよ。 何年か前には先輩として話したこともあったなぁ」

「・・そん時に来た先輩に相談したんですよ。 希望と全然違う配属で、もう辞めたいって。
そしたら、甘えたこと言ってんなってすっげー怒られたんです。
与えられた仕事を頑張ってたらいつか絶対に希望の部署にいけるから、諦めるなってウザいくらいに熱く励まされてーー」

「へぇ〜〜いい話だね。 て、あら?」

なんか、聞いたことがあるような・・
じゃなくて、言ったことがあるような・・

数年前の記憶がぼんやりと甦ってくる。
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