吸血鬼に甘い鎖を
ヒュッと音がして
軽く窓があいたそばに
リヴィア君が座っている。



「話聞いてたの?」



「悪いな。
隣の部屋だと聞こえるんだ」



軽く苦笑する。




「…どうだろう。


自信は…あんまりないかな」



「あいつを好きじゃないのか?」


「ううん。そうじゃないよ。

クロト君のことは好き…。


でもその気持ちでティナさんに
勝てる自身があんまりない。


そう思ってる時点で
すでに負けてるのかもしれないけど…」



「…私は【契約】っていう
無理やりな形でクロト君と
婚約者になって
流れで好きになってしまった、って
感じがするから。


もちろん本当は違うんだけど!


普通に考えたら10何年も
思い続けたティナさんのほうが
よっぽど好きなんじゃないか…って」



リヴィア君はため息をついて
私のほうへ歩いてくる。



「…サキはバカだな」



「…いきなりバカとか言わないでよ」


すぐ近くまで来たかと思うと
私の手をそっと握る。




「だってサキ、
大事なこと忘れてんだもん」


そう言って笑う。


…大事なこと?



「おまえが「好き」で
負けてるかもしれなくても
クロトがおまえを好きな限り
その気持ちでは負けない」



「あいつがおまえを
大事にしてるのは
おまえが一番分かってんだろ?


だったらそれも信じてやらなきゃ。

おまえが負け腰になったら
クロトのおまえへの気持ちまで
へし折ることになるんだぞ?」




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