恋に目覚めたシンデレラ


葵が乗ると車はウィンカーを点滅させながら道路を走る他の車の流れに混じり走行しだした。


大通りを過ぎると車は脇道に入って行く。


夕方のラッシュで道路が混む時間にもかかわらずいつも通り途中から裏道を走行して来たから、あっという間に着いてしまった。


「ありがとうございました」


車のドアを開けてくれた三枝にお礼を言い降りた。



「あのっ、晃さんは帰りは何時ごろになるのか分かりますか?」


「帰りですか?はっきりとした時間はまだ分かりません。葵様を先にお送りしたら会社に戻って待機しているように言われただけなので」



「そうですか」


「葵様、もう中にお入り下さい。私もそろそろ戻らないといけないので」

玄関の方に行きかけて立ち止まり振り返った。


「三枝さん……さっきよりも暗くなってきたから。運転に気を付けて下さいね」


「……ありがとうございます気を付けます。葵様は良い方ですね。
何度か女の方をこの車に乗せましたが気を付けてなんて言葉は初めてですよ。全て良家のお嬢様達だったのですが中には私の運転が気に入らなくてお叱りを受けたこともありますよ」


「……その方たちに怒られたんですか?」

三枝が育ちのよさそうなお嬢様に叱られてる所なんて想像できなかった。

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