恋に目覚めたシンデレラ


「おはようございます。葵さん」

うっ……。
「こ、晃さん……おはようございます……」


キッチンで顔合わせた途端に昨夜の滉の姿が頭の中でちらつき葵はすっかり狼狽えてしまう。
挨拶を返すときにつっかえてしまった。
ゆうべの事は気にしてないのか普通に話し掛けてきてくるが。
逆に葵は意識しすぎてこのあとも思うように返事が出来なかった。


美味しいはずの小野寺のお料理も今朝は味があまり解らなくてせっかく作ってくれたのにと申し訳なく思う。

隣にいる晃は周りに聞こえない程度の小さな声で葵の名前を呼んだ。

「昨日の事は気にしてませんから葵さんも気にしないで良いですよ」

「き、昨日は……す、すみませんでした。お風呂から出て寝てしまって……ほんとに洗濯物を取りに行っただけなんです。晃さんがいるとは思わなくて……」

「謝らなくてもいいです事故のようなものですから。それに俺は見られても別に構わないのですが葵さんはそういう訳にはいかなかったようですね……反省してます」

そういう事には慣れているということなのか。
交際していた女性達も滉の裸体を……そういう関係だったのだろうか。
滉からしたら葵などずいぶん子供に見えるのかもしれない。






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