私たち暴走族と名乗っていいですか?(上)

 道場にたどり着くと、丁度走りに行くところだったのか、剣道部にしては珍しいジャージ姿だ。

「あぁ、秋奈ちゃんお疲れ」

 くまさ…部長さんが声をかけてくれる。

 その手にいつも巻いてたサポーターがなくなってる。

「お疲れ様です。手の調子、どうですか?」

「あぁ、テスト期間ですっかり良くなったよ」

 やっぱり休めば治ったのか…。

 よかったですねと言葉は返してるけど、多分顔は引きつってる。

 まぁ、部長さんも本調子に戻ったのならよかった。

「あぁ、瞬桜の奴道場で待ってるよ」

「アップも先にさっさと済ませやがってさぁ」

 げ、瞬がいないと思ったらそういうこと…。

 愚痴を吐く同級生の子には申し訳ないけど、もう全然耳に入ってない。

 いきなり瞬と2人きりってきつい。

「じゃ、秋奈ちゃんは中に入っててな」

「は、はい。外周頑張ってください」

 部長さんを先頭に走り去っていく剣道部男子。

 道場の中を少しだけ覗くと、女子の姿はない。

 確か女子ってテスト後はミーティングだから練習ないんだっけ。逃げ道がない…。
< 176 / 369 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop