囚われのサンドリヨン ~御曹司様のご寵愛~【番外編を追加しました】
「いつ戻れるか分からない。
今は、長くオマエと離れるなんて…考えられない」

うっ…この状況からの
コロし文句だ…
コロッとコロされそうになるのを水際で思い留まった。

「尚更です‼
いくら私がろくな仕事してなくっても、そんなに長くは休めません。
だいたいね、そんな長いことカチョーと私が職場から消えたら、怪しまれることこの上ないじゃあないですか」

「俺は別に構わない、他のヤツに知らせたいくらいだ」 
ニッと笑って眉を上げる。

「…そりゃあカチョーは来年あそこを離れるから良いでしょうが…
私はずっといるんですよ?」
私は口を尖らせた。 


「…分かった」
彼は淋しげにドアを開けた。

勝った!

「1時間後、タクシーがくる。1週間の準備を整えておけ」

アレ?

「いっ…週間⁉
ちょっ、全然分かってないじゃ…」


ドアの前で、彼はしばし躊躇った。


「……弱った父に会うのが」

 
スウッと深呼吸を一つ、した。
 
 
「怖い」

 
 こわ……い…?


彼の大きな背中が、未知の恐怖に脅えている。


「付いてきては…くれないか」


かつてないことだった。
彼が他人に、しかも私に “頼む” なんて。

私はゴクリと唾を飲んだ。

「わっ……かりました」


「会社の方は何とかしよう」

彼は足早に部屋を去った。
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