囚われのサンドリヨン ～御曹司様のご寵愛～【番外編を追加しました】

私はバッと起き上がった。

「そ、それで具合は……」

「分からない。これから直ぐに中東に飛ぶ」

彼は素早く着替え始めた。

グループのトップ、齢70の弥一郎翁が滞在先の外国で病に倒れた。
彼の顔色からみると、かなり深刻な病状らしい。

それが跡取りの彼にとって大ゴトだというのは、私にだって分かる。


「あの…気を付けて…」

着替えを終えた彼の背中に、私はか細く声をかけた。

彼が怪訝そうに振り向いた。

「何言ってる、２席分を手配させた。オマエも早く準備しろ」

「は？」
私はキョトンと彼を見て、意図を察して慌てて叫んだ。

「な、何言ってるんですかっ、
私、会社あるんですよ？」　

「有休をとれ。会社よりこっちが一大事だ。大体オマエ、ろくな仕事してないだろうが」

「そ、そんな横柄な…ダメに決まってます‼」

私は断固抗議した。
ジョーダンじゃない！
下っぱ四葉、先輩方にニラまれちゃう！！


「美咲…」

彼が背後から顔を寄せた。
かなり前から、彼は私を下の名前で呼ぶようになっている。

耳に響く深い声が鼓膜を震わせ、擽ったいような気分にさせる。
「はぁうっ…」