囚われのサンドリヨン ~御曹司様のご寵愛~【番外編を追加しました】
ちょっと勿体ないけれど、タクシーを拾ってお屋敷に戻る。

幸せな気分で満たされていた。

奴は信用ならないから、通帳と印鑑は預かっておいたし。

これでやっと自由の身……

まてよ。

はたと気がついた。

 
借金が………返せてしまう。

ということは、私があそこに居られる理由が、完璧に無くなってしまう。

私と彼を縛る鎖は完璧に断たれたって事、免罪符はもう使えない。

 
 

気づいてしまった現実に、鬱々とボロ家に戻ったら、もう深夜2時を回っていた。
 
「遅かったじゃないか」

真っ暗な部屋のベッドから、黒い影がゆらりと立ち上がる。

「あ…」
彼が来て待っていたようだった。

私は咄嗟に目を閉じた。叱られると思ったからだ。

しかし、闇の中の長い腕は、私を優しく抱きすくめただけだった。

「居なかったから……心配した」
切なげにギュっと抱いた手が、大きな体躯が震えている。

「あ、あの実はね…」

弁解しようと開いた口に、彼は細い人指し指を押し当てた。
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