囚われのサンドリヨン ~御曹司様のご寵愛~【番外編を追加しました】
「悪い。
信じてはいたが…
電話が置きっぱなしだったから…履歴を見てしまった。
会えたのか、父親に」
ばつが悪げに眉尻を下げた。

「…はい」
「そうか。良かった」
彼が柔らかに口付けると、たちまち擽ったい感覚が全身に走る。

「もう黙って居なくなったりは…するな?」
「ん…」

さっきの私と同じ事言ってる…

可笑しさと哀しさが込み上げて、瞼が勝手に熱くなった。
気付いた彼が、慰めるように頬を伝った涙を拭ってくれる。

「愛してる…」
「私も」
 
融かされながらも、私の心は別なところを彷徨った。

どうしよう……

猜疑心でいっぱいの冷淡だったこの人が。
私を無心に信じてくれて、こんなに優しい言葉をくれるまでになった。

無邪気な愛情、真っ直ぐな情熱。

ハッとした。

思い上がりかもしれないが。

私が別れを告げたなら、今の彼が素直に聞き入れるとは思えない。

かと言って、黙って姿を消したなら、母親と同じ、また捨てられのだと絶望したりはしないだろうか。
そうなれば、彼の心の一端に宿った暖かいものは、また冷たく冷えきってはしまわないか。

あんまりだ。

私だってこの腕に素直に抱かれてたいのに。
これから私は、彼と別れる方法を考えなければならない。
 
悲劇に酔いしれるヒロイン四葉は、今にも酔っぱらいそうだ。
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