囚われのサンドリヨン ~御曹司様のご寵愛~【番外編を追加しました】
………
その日の夕方。
とあるホテルの一室で、前を通りがかったギャルソンが、ビクッと肩を揺らすほどの、大笑いが響いていた。


「プアッ……くっ、苦しい…」

噂のレディとは

………私だ。

パラリとツケマツゲが落ちる。

マナーコンサルタントから派遣された先生が、プッと吹き出すのをガマンして、眼鏡をキュッと持ち上げた。
 
「…今日の演技はまあまあでした。が、途中で涙目になっておられましたよ?」

「だって私、笑いのツボが浅いんですよぉ。
全く、変なキャッチコピーを作るから……」

「仕方がありません、奥方様は大変物覚えが悪く、喋れば必ずボロをお出しになられますから。苦肉の策というものです」

「うう…酷い…」

やり合いのさ中、間をおいて2回ノック音が聞こえた。

「騒がしいな」
「あ、アナタ!」

ビジネスの会談を終えたタカトラさんが、ドアから顔を覗かせる。

「これは、ご当主様……では、ワタクシはこれにて」
一礼の後、先生は部屋を後にした。
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