囚われのサンドリヨン ~御曹司様のご寵愛~【番外編を追加しました】
「オイ」
 彼が後ろを振り返り、ジロリと一睨みしたので、後藤田さんはサッと口を止めた。

 そうして、何事もなかったかのように流暢な説明を始める。

「ここは14世紀、マインツの大司教が巡礼者を保護するために建てられた城でして…
 あの『眠り姫』のモデルになったとも言われているのですよ。
 その昔…」

「…後藤田。
 部屋まで付いてくるつもりじゃないだろうな」


「はは、これは申し訳ごさいません。では、私はここで」
「え、帰っちゃうんですか?」
 キョトンと尋ねた私に、後藤田さんはふっと口元を綻ばせた。

(『お二人で』、とのご希望でございます)
(え…)

「後藤田!」
「これは失礼」

 彼の怒鳴り声を軽く受け流す。
 含蓄のある笑みを残し、彼は消えるように去っていった。

 何だか…
 タカトラさんが、すっかり手玉に取られている。

 クスクスと彼の背中に隠れて笑う。

 
 にしても彼、
 私のために『お城のホテル』を貸し切りだなんて。


 これが、彼の本当のサプライズだったのか。
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