囚われのサンドリヨン ～御曹司様のご寵愛～【番外編を追加しました】

「……帰るか」

　やりきれない深い溜め息を吐いた後、藤城課長は駐車場へと歩き出す。

「…どうした？」

　その場に立ち止まってしまった私を、彼は振り返った。

「さっさと……四葉？」

　課長と2人になった私は、すっかり気が緩んでしまったのだ。
こらえ続けた涙が勝手に流れ出た。

「課長…、課長は。…私をあのヒトに…差し出そうとなさったんですかぁ？」

「やっぱり……
アイツに何かされたのか？」

　彼も最後のやり取りで、おおよその予測はしていたのだろう。
　私は小さく頷いた。


「私はカチョーのシモベだから？…それでも…あんまりに…酷いです…」

　弱々しく胸を打つ拳を、彼は止めようとはしなかった。

　分かっている。
　課長は必死だった。私に構う余裕なんかなかったんだ。

　それでも…
　怖かったのに助けてくれない御主人様に、私は恨み言を言いたかった。

　一回やってしまっているからなのか、おかしなことに私は、課長の前では随分と気安く泣けてしまう。