契約彼氏はエリート御曹司!?【試し読み】
とんでもないことを理由に交際を申し込まれているのに、〝仮で〟という言葉がないせいか、本当に告白されているんじゃないかと、勘違いしてしまいそうになる。
「そ、そう言われても……」
誰も近づいて来ないだろうと思っていたから、どんな理由にせよ、頼りにされるんは嬉しい。人をダメにするのではなく、役に立てるのだから。だけど、会社の問題に巻き込まれると考えると躊躇してしまう。
「何をしたらいいかわかりませんし」
「キミは彼氏をダメにしてきたんだよね。だから、普通に恋人みたいに付き合ってくれればいいんだ。どうかな?」
総本部長が料理でも勧めるかのように提案してくる。
「恋人みたいに……?」
「そう。こうして食事したり、たまにでかけたり……そのときにダメ男になるためのアドバイスをもらえると助かる」
ダメ男になるためのアドバイスか……今までの彼氏を思い返せばいいのかな?
「わ、私にできるんでしょうか? 他にいいアドバイスできる人がいるかもしれませんよ」
「いや、キミがいいんだ」
総本部長に強く言い切られてしまう。
「人助けだと思って、どうだろうか?」
「人助け……」
そ、そう言われるとなんとかしてあげたくなっちゃうんだよね。
今は彼氏もいないし、好きな人もいない。付き合える状態ではある。平日は家と会社の往復だし、休日もひとりでいることが多い。
何より、総本部長が男性社員から避けられている私を求めてくれているわけで……。
「……キミだけが頼りなんだ」
返事に困っていると、総本部長はダメ押しとばかりに、懇願してくる。
うう……だから、その言葉は弱いんだって……。
「か、仮……ですよね?」
つい、前向きとも取れる質問をしてしまう。
「ああ、とりあえずは」
「とりあえず?」
「いや、なんでもない」
総本部長は、言いたい何かを呑み込むように苦笑した。
「仮だから、身体関係は一切ナシにするよ」
「そ、それはもちろんです」
総本部長に迫られたら、正直断りきる自信がない。
「けど、ダメ男になるために、きちんとキミの彼氏にならせてもらう。だから、連絡もとり合うし、デートもする」
「か、身体関係以外は、普通の恋人同士と変わらない……ということですね」
「ああ。キミは彼氏をダメな男にしてきたんだから、俺もそれなりに距離を縮めないと、ダメになれないんじゃないかと思う」
「そ、そうですね……」
確かに、距離があったら、私の世話焼きな性格も発揮できない。
「……期限はありますか?」
ああ……また前向きな質問を……。
意志に反して口が動いてしまう。