契約彼氏はエリート御曹司!?【試し読み】
私にはひとつ下に双子の妹がいるので、小さい頃から両親には『お姉ちゃんなんだから、しっかりしなさい』と厳しく育てられてきた。
まだ甘えたい盛りのときにもあまりかまってもらえず、妹たちの世話をして褒められるときだけ、両親の気を引くことができた。だから、妹たちを引っ張り、助けていくことが自分の役割だと思っていた。
私と総本部長とでは、あまりにも立場が違うけれど、似たものを感じる。
「専務はどう言われているんですか?」
「それが……肝心の兄はやる気がないみたいで。何度も話し合いを試みたが、全然とり合ってくれない。役員からも説得してもらえるように頼んだけれど、役員は俺に社長になってほしいから断られてしまった」
せめて専務にやる気があれば、役員も考え方が変わったかもしれない。総本部長が八方塞がりで困っているのは伝わってきた。
「会社の後継者問題についてはわかりました。……でも、私が手伝えることってあるんですか?」
私はただの平社員だし、しかも『アイツには近づかないほうがいい』だとか『社内で男作んな』とか悪いウワサが流れているのに……。
こんな私にできることがあるんだろうか。
首を傾げると、総本部長は目を輝かせた。
「それで、キミに俺をダメにしてほしいんだ」
「……へ?」
昼休みに呼び出されて言われた『ダメにしてほしい』という言葉は、ここに繋がってくるの?
ポカンとしていると、総本部長は言葉を続けた。
「俺がダメな男になれば、役員は失望する。そうしたら、兄に頼み込むと思うんだ。さすがに兄も、自分が社長になることを反対していた役員から、『社長になってほしい』と言われれば、受け入れると思う」
「そ……そんなにうまくいきますか?」
とてもじゃないけれど、うまくいくとは思えない。
しかし、総本部長の瞳は揺らぐことなく、凛とした声には力があり、心からうまくいくと考えている様子だ。
「ああ、うまくいくと思っている。……それに、兄にはとり合ってもらえないし、役員も動かないとなれば、今はキミに頼るしかないんだ」
「そ、そんな……」
ここまでハッキリうまくいくとお思って私を頼ってくるということは、総本部長も私が付き合った人をダメにするというウワサを心から信じているということなんだろう。
これじゃ、男の人……本当に誰も近づいて来ないだろうな。
ちょっとだけ悲しさに胸を痛めていると、総本部長が姿勢を正して私を見据えてきた。
「俺と……付き合ってほしい」
薄暗い中、総本部長の黒々とした瞳が私を捕らえる。目眩がしそうなほどの熱い視線に、胸がトクンと大きく波打った。