若の瞳が桜に染まる
「蘭さんにコチョウラン見てもらった。
黄色は見たことなかったって」

それだけの報告。その姿は、親に今日の出来事を聞いてもらいたい子どもの無邪気さのように見えた。

我久も我久で、優しい目で日和を見ている。

「そっか。良かったな。

で、それ俺も見たいんだけど」

何の嫉妬か、自分も見たいと要求する我久。
それに嫌な顔一つ見せずに答える日和。

「あっちに咲いてるよ」

それ以上、語られる気配は無さそうでホッとした蘭。

それよりも、二人が並んで庭を眺める光景を見て、言葉に表せない感情が渦巻いていた。
我久が幸せならそれで良いと思う。
でも、もしも幸せの先に裏切りがあるんなら、早いうちに全部を壊してやる。
…この手で。

そんな、一歩間違えれば毒々しく変わりそうな感情。
蘭は拳をぎゅっと握り、二人を見ていた。

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