若の瞳が桜に染まる
闇夜を照らしているのは大きな満月。

その月の下で揺れる圧倒的な存在感を放つ白い花たち。月明かりの下のせいか、青白く光っているようにも見える。

甘くて優しい香りは、その花から放たれているものだと気づいた。

「ゲッカビジンっていう花。
…これね、夜にしか咲かないの」

「え、夜だけ?」

そんな花が存在するなんて全く知らなかった我久は、夜にしか咲かない花を物珍しく眺めた。

「うん。私が育てたものは、満月の夜に一斉に咲く」

「綺麗だな。

それを見られたって俺、すごく運が良いってことだ。
今日が誕生日でよかった」

本当に運が良い。
残業なんてチャラにして良いと思えるほどに。

こんなふうに誕生日を過ごせたことを、心の底から嬉しいと思った。
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