若の瞳が桜に染まる
「これが、シャクヤク?確かに、プレゼントにぴったり」

「ここにあるのは赤だけど、ピンクとか白もあるから…。
女性へのプレゼントなら、そういう色がいいのかも」

ピンクや白のシャクヤクも想像したが、吉田の気に入った女性なら赤が一番似合いそうな気がした。赤のシャクヤクを勧めよう、我久はそう決めた。

と、そこで、日和に何か誤解を与えているかもしれない気がして心がざわめきたった。

「あ、その…、プレゼントするのは俺じゃなくて、上司の吉田さんが渡したい人がいるらしいんだ。けど、自分でどんな花が良いのか調べるのは恥ずかしいからって、頼まれたんだ。
そう、だから…何て言うか、俺じゃないんだ」

「…そう」

一気に喋られて困惑気味の日和。

自分が誰か女性に花をプレゼントすると思われているようで、言い訳しなければと思った我久は身ぶり手振りを織りまぜて誤解を解こうとしたのだが。日和にとってそんなことはどうでも良い様子。

すでに意識は花に向いている。
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