若の瞳が桜に染まる
まだ日が傾く前、早めに仕事を切り上げた我久と日和がそれぞれ向かったのは、すぐ近くにある古い木造建築の民家だった。

「依子さん、荷物取りに来た」

「え、日和?」

勝手にアパートを想像していたは、状況について行けずにいた。

「おかえりなさい。せっかく若い子が来てくれたと思ったのに、もう出ていってしまうんじゃね。残念じゃよ」

手前の部屋から出てきたのは、猫を抱えたお婆さん。一瞬、日和の身内かとも思った我久だが、どうやらそういうわけではなさそうだった。
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