若の瞳が桜に染まる
屋敷に到着して、軽トラを我久の部屋の前の庭に停める。広大な敷地だからこそできる荒業だ。

「日和と何喋ってたんだ?」

荷台を降りた我久は、すぐさま旬の元へと走った。

「特に話はしてませんよ。
自己紹介くらいです。

俺だって気まずいんですよ。拐った相手に気安く話しかけられませんって」

「まぁ…それもそうか」

心情を察した我久は、部屋で待機していた蘭を呼んで、日和に紹介した。

「俺の護衛をしてくれてる、旬と蘭だ。
信頼の置ける二人だから、俺がいないときに何か困ったことがあったら、頼ってくれ」

「俺がいるときには真っ先に俺を頼れってことですね」

「そうは言ってないだろ」

いちいち我久をからかわないと気が済まない旬と、いちいちそれに反応してしまう我久。
そんな二人の間に入るように、日和が一歩前に出た。
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