バレンタイン・イヴ。
初めての本命。
もう言う機会はないと思っていた。
あの日、君があんな事を言うまでは。


2/13(土)。バレンタインイブ。

「いつもありがとう」って言うんや。
そうやって渡して、笑顔で授業に挑むんや。

カバンを持つ手に力が入る。

登校すると、クラスはバレンタイン一色。
女子同士で「友チョコ」を渡し合っている。

大量に作り上げた小粒のチョコを全員にあげる。

ーチャイムー

数Ⅱの先生のご登場。
隣の二人と先生が盛り上がる。
お調子者の真田(さなだ)くんと…
優しさ菩薩級の小日向(こひなた)くん。
あ…う…小日向くん。
恋人…居ないって言ってたよな…。
チョコ渡せてな…


センセー
「カノジョからもろたんやったらセンセーがもろたるわ」

真田
「いや、センセーこれ小嵐(こがらし)からもろてんてば!」

センセー
「そうか、しゃーない、センセーがもろたろ」

真田
「いや、だ!か!ら!小嵐からやて!」

小日向
「えーなー俺もチョコ貰いたいわ〜」


「小日向くんの分あるで!」


羨ましそうに真田くんに言う小日向くんに
咄嗟の一言が出てしまった。

真田
「ええやん、本命もらえたやん」

また!もう!コイツ!余計なこと言いおって!

けれど嬉しそうな小日向くんを見ると
真田くんに文句も言えない…。

小日向
「え!?まじで?!本命なん?!これ本命なん?!」

わかってる。
私からやから嬉しいんやなくて、
「本命を貰えた」事実に喜んでるんよ。

それでもその笑顔でまた心は緩んでしまう。

その後、私はどう接するのが良いのかモヤモヤしたまま学年末テストを迎えた。
テスト前一週間、放課後の教室は数人残っていた。
私もそのうちの一人。小日向くんもそのうちの一人。
なんとなく、今まで通りの会話が出来た。

テストは無事終わり、
平和に修学旅行に向けて皆が動き出す中、
やっぱり私は小日向くんの事が気がかりだった。

あの笑顔を見るたび、
どんどん「好き」は溢れて行くのに、
どんどん距離は離れていく。
やっぱり秘密にしておけば、いつも通りしておけば…。
そう思うこともあった。

けれど今は、
「好き」の方が大事なんだ
と、やっぱり貴方の笑顔に悟される。
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