クジ引き
夢の中でその河は茶色く濁っていて、ゴォゴォと音を立てながら流れていた。


普段は穏やかな川が荒れている。


そんな川を覗き込んでいる1人の男子生徒を見つけた。


黒いランドセルを背負ったその子はあたしと同じくらいの身長で、ガードレールから身を乗り出すようにして川を見ている。


なにがそんなに面白いのだろうと思ったその時だった。


男の子がちゃんと靴を履いていなかったようで、青い靴が川に落ちていくのを見た。


男の子が「あ!!」と声を上げて、ガードレールの下から川を覗き込む。


あたしはその時、男の子は川へおりたいのだと思った。


おりて靴を拾えばいい。


そう思った。


ガードレールにひっかかったランドセルが邪魔そうだったから、あたしはそのランドセルを両手でグッと押して凹ませて、ガードレールから外したんだ。


瞬間。


男の子は川へと落ちていた。


大きな水音が聞こえてきて、男の子が茶色い水に飲みこまれるのを見た。


靴を取るんじゃなかったの?


どんどん流され、完全に沈んでしまった男の子にあたしは怖くなり、そのまま家に逃げ帰ったの野だった。
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